不動産鑑定士・弁護士が名古屋・愛知県の不動産と相続の問題を解決

(金融マン、鑑定士、弁護士として扱った不動産件数が4000件を超える不動産に強い弁護士)

占有移転禁止仮処分で延滞借主が退去

訴訟などの本来の手続の前提となる処分の段階で解決が付いた事案です。

 

通常、家賃滞納の借主を退去させるためには、

家賃滞納を理由として賃貸借契約を解除し、

解除の結果、借主が物件に滞在する理由がなくなるので、

物件の明渡を求める訴訟を提起したりします。

 

ただ、明渡しの判決をもらっても、

強制執行をするときに、

判決の被告とは違う人が物件にいると、

その人に対する直接の判決が無いためややこしいことになります。

(家族とかであれば、利用補助者とか、履行補助者と言われて、

 被告である借主の一部みたいな扱いになりますが)

 

強制執行をしたときに、

被告とは全然違う人がいた場合であっても、

その人に対しても出ていけと言えるようにするのが

占有移転禁止の仮処分です。

 

占有移転禁止の仮処分が決定して執行されていると、

借主は、

物件の占有を他者に移転することができないということになるため、

強制執行のときに他人がいても、

その他人は、物件を占有していることになりません。

物件を占有していないので出てけと言えるわけです。

 

この占有移転禁止の仮処分自体は、

執行官が物件を訪ね、

物件の中に入って仮処分の貼り紙をするというだけですが、

裁判所の執行官が行う手続なので、

これで観念して自分から出ていく延滞借主もいます。

 

最近もそのような案件がありました。

占有移転禁止の仮処分で素直に出ていかない延滞借主に対しては、

訴訟して、判決を取って、強制執行ということになります。

借りた後で賃貸借物件に不具合が発生したとき家賃減額を請求できるか

現行民法では、賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、

賃借人はその滅失した部分の割合に応じて賃料の減額を請求することができる

となっています(611条)。

 

しかしながら、滅失以外の場合、たとえば、大雨のために雨漏りがして、

部屋の一部が使えなくなったような場合に、

その使えなくなった割合に応じて家賃の減額を請求することができるのか

という疑問に答えることができる条文がありませんでした。

 

現行民法で規定しているのは賃借物の一部が「滅失」したときの規定であって、

滅失したわけではないが、

使えなくなったというような場合にピッタリな条文がなかったわけです。

 

ところが、改正民法では、

「 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることが

 できなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することが

 できない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益を

 することができなくなった部分の割合に応じて、減額される

 2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益を

  することができなくなた場合において、残存する部分のみでは

  賃借人が賃借をした目的を達成することができないときは、

  賃借人は、契約の解除をすることができる。」

と変わりました。

 

まず、滅失だけではなくて、「滅失その他の事由により」と改められ、

様々な場合に対応できる条文になりました。

 

次に、減額を請求することができるではなく、「減額される」

断定的な文言になりました。

法的には、借主が減額請求しようがしまいが、

当然に「減額される」ということになってしまったわけです。

瑕疵担保責任に関する民法改正(その1)

瑕疵担保責任とは、売買契約で買ったものに瑕疵すなわち不具合があった場合に売主に対してその責任を問うものです。

改正民法瑕疵担保責任について考え方や具体的な解決方法を変えています。

まずは、改正後の規定を見てみましょう。

 

改正民法562条

「 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して

 契約の内容に適合しないものであるときは、

 買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し

 又は不足物の引渡しによる履行の追完を請求することができる。

 ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、

 買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

 2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、

  買主は、同項の規定による追完の請求をすることができない。」

 

現在の瑕疵担保責任は、解釈によって、特定物に関することに限られ、

また法文によって瑕疵とは「隠れた瑕疵」ということになっています。

特定物とは種類物でないということです。種類物とは、同じ内容・品質のものが多数存在する商品のことです。

たとえば、大量生産される新車は種類物ですが、中古車は、全く同じ物がこの世に一つしかないので特定物ということになります。

隠れた瑕疵とは、売買契約をした時点では買主が気づけなかった瑕疵のことです。

 

改正民法では、特定物・種類物という分類に関係なく瑕疵担保責任を追及できるようになりました。また、法文から「隠れた」という文言が消えました。

 

判例は、隠れた瑕疵と言えるためには、買主が善意・無過失すなわち、瑕疵があることについて知らなくて、かつ、知らないコトに過失が無いことが必要だとしていました。

 

しかし、改正民法は、「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」という書き方に変わっていることから分かるように、売買契約において、売主・買主が、目的物について、その種類・品質・数量をどのようなものとして把握していたのかが重要になります。

それを前提として、給付された物がその契約内容に適合しているかどうかを判断することになるわけです。

 

逆に言うと、契約に適合していたかどうかという問題に帰着するため、瑕疵が隠れたもであるかどうかを判断する必要がなくなったということになります。

契約不適合と言えば良く、「瑕疵」という言葉が不要になったと言えるかもしれません。

山と立木

山には木が茂っていますが、

樹木の種類などによっては、山の土地としての価値よりも、

茂っている樹木の方に価値があるということが多くあります。

 

ところが、何もしないと、

山の土地に生えている樹木は、山の構成物となり、

山と一体の物として取り扱われます。

したがって、山を売れば、

その山に茂っている樹木も売ったことになるのが原則です。

 

しかし、山よりも樹木の方が価値があるというような状況ですと、

樹木だけを独立して取引の対象にしたいとか、

樹木だけを担保に取りたいというようなケースが起こります。

 

そこで、「立木ニ関スル法律」という法律があります。

この法律では、

「本法ニ於テ立木ト称スルハ一筆ノ土地又ハ

 一筆ノ土地ノ一部分ニ生立スル樹木ノ集団ニシテ

 其ノ所有者カ本法ニ依リ所有権保存ノ登記ヲ

 受ケタルモノヲ謂フ」(1条1項)

と定めて、立木登記ができるようになっています。

 

登記ができるのですから、立木登記をすれば、

立木だけを土地から独立して取引の対象にできるし、

立木だけを土地から独立して担保に入れるということも

できるというわけです。

 

また、この法律によらなくても、

明認方法という方法で、立木を土地とは独立した財産として

取り扱うことができます。

明認方法とは、立て札を立てたり、

木を削ったりして、所有者の住所・氏名など一定の事項を明記し、

これらの樹木は、土地とは独立した財産だよと示すこと言います。

 

ただし、

明認方法に記載されている所有者が亡くなっていたりすると

その明認方法が本物なのかどうか、

判別の仕様がないということがあり得ますし、

登記所の登記のような明確なものではないので、

いろいろと問題が発生することがあります。

遺言書の保管制度

相続法の改正で、自筆証書遺言保管する制度が創設されました。

「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という法律によって、

遺言書保管所の遺言書保管官が取り扱うこととされています。

 

この制度は、遺言書の利用促進を図ると共に、

法務局で自筆証書遺言を保管することによって、

遺言書の偽造・変造・隠匿などによる紛争を防止するために

創設されました。

 

保管申請の要件は、

①一定の様式のものであること

②無封であること(封をしていないこと)

③受遺者、遺言執行者等の住所氏名を明らかにすること

④遺言者自身が遺言書保管所に出頭すること

です。

④の遺言書保管所の管轄は、

遺言者の住所地、本籍地、所有不動産所在地です。

 

この制度を利用すると、

遺言書保管所の施設内で遺言書が保管されることになりますが、

遺言者は、閲覧や保管申請の撤回は可能です。

遺言者が亡くなった後は、

相続人、受遺者、遺言執行者など法定の利害関係人は、

遺言書情報証明書の交付請求ができます。

遺言書情報証明書の交付または、遺言書の閲覧があったときは、

法務局から、これらの法定の利害関係人に遺言書保管の事実が通知されます。

また、遺言書の検認も不要になります。

 

上に書いたように、

保管後の遺言の撤回は可能ですし、

矛盾する遺言をすれば、後の遺言の方が優先される(民法1023条1項)ことに変わりはありません。

したがって、遺言書の保管制度は絶対的なものではありません

賃借人の原状回復義務に関する民法改正

民法の債権法の部分が改正され、

平成29年5月26日に成立、6月2日に公布されました。

平成32年4月1日から施行されます。

この民法改正では、不動産に関する取引(売買・賃貸など)にも

色々な影響があります。

 

たとえば、賃貸契約に関する原状回復義務

 

原状回復義務とは、借主は、借りた物を返すときには、

原状(元の状態)に回復して(戻して)返さなければならないという義務です。

 

現行の民法では、

「借主は、借用物を原状に復して、

 これに附属させた物を収去することができる」(民法616条にて準用する598条)

として、借主の権利という形で、

原状回復義務があるということだけ抽象的に規定していますが、

その内容については特に明記してませんでした。

 

改正民法では、

 改正民法621条

  「 賃借人は、賃借物を受け取った後に

   これに生じた損傷(通常の使用及び収益によって

   生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化を除く

   以下この条において同じ。)がある場合において、

   賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務

   を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することが

   できない事由によるものであるときは、この限りでない。」

と規定されました。

 

すなわち、

原状に復する義務として、元に戻すのが義務であると明記され、

通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の

 経年劣化を除く」として、

 

単なる老朽化と言えるようなものを

新品にして返す義務はないということも明記されました。

これらは、最高裁判所での判決などを改正民法の条文に取り入れたものです。

 

注意しなければならないのは、

よくある例で、ハウスクリーニング代として○万円を支払うと

最初から契約条項に書かれていたりする場合です。

 

改正民法621条は、

この条文のとおりにしないと違法になってしまうような

強行規定ではなく、

この条文と違うことを合意して定めることができる任意規定です。

 

民法の条項が任意規定の場合、

当事者どうしの契約で、

その規定と違うことを取り決める(特約と言います)のは

自由です。

そのため、

上に書いたような

「ハウスクリーニング代として○万円を退去の際に支払う」

というような

契約条項が契約書に書いてあれば、

改正民法621条の特約として有効になってしまいます。

 

現行民法の解釈としても、最高裁判所判例は、

「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が

賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、

仮に賃貸借契約書では明らかではない場合には、

賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、

それを合意の内容としたものと認められるなど、

その旨の特約が明確に合意されていることが必要である。」と

していました。

 

下級審の判決例では、

オフィスビルなどについて、

賃貸物件のクロス・床板・照明器具などの取り替えを

原状回復義務としていた契約条項を有効と認めたり、

天井の塗り替える原状回復義務を課す契約条項までも

有効だと認めたものがあるようです。

 

ただ、住宅の場合には借主保護の観点が強くなり、

また、一方的に個人借主に不利な契約条項などは、

消費者契約法10条などによって無効になる可能性もあるので

一概に特約が有効とは言えない面もあります。

土地の所有者は、空も地下も俺の物?!

有権者は、法令の範囲内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をすることができ(民法206条)、土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶとされています(民法207条)。

民法では、特に土地の上下の範囲に限定は無く、民法だけですと、自分が所有する土地の上の空や更にその先の宇宙まで、自分が所有する土地の下の地下、地球中心部の核や更にその先の地球の裏側まで権利があることになります。

空については、航空法などの法律が別にありますし、そもそも宇宙については、日本という国の権利がどこまであるのかという問題があります。日本という国の権利が及ばない場所について、日本で作った法律である民法に所有権があるよと認めてもらっても意味がないからです。地球の裏側も同じです。

地下について、大深度地下の公共的利用に関する特別措置法」という法律があり、40m以上の地下や、基礎杭の支持地盤上面から10m以上深いような地下には、土地の所有者に関係なく公共的利用物を建設することができるようになっています。

私有地の地下で大深度地下と言えないような深さのところに地下鉄を通すような場合には、上の民法の規定が生きてますので、地下鉄の事業体は、その土地の所有者と交渉して地下鉄を通すための区分地上権という権利の設定契約をします。

また、高圧電線を私有地の上に通すような場合には、地役権という空中の利用権を設定する契約をしたりします。

賃借人は壁にポスターや画びょうの跡が残っても責任なし

賃貸借契約では、契約が終わって、借りていた物件を返還するときに、

賃借人に原状回復義務があります。

原状回復義務とは、借りたときの元に戻して返すということですが、

自分で元に戻すのではなく、元に戻すための修繕費を負担することにする場合も多いです。

 

原状回復義務は、元に戻して返すということですが、

しかしながら、

通常の使用・収益のための経年劣化老朽化を新品にする義務はありません

ただ、

通常の使用・収益による経年劣化・老朽化なのか、

それとも、賃借人が原状を変更したと言えるような

原状回復しなければならないものなのか、

どちらなのか微妙なものは数多く存在します。

 

そこで、

国土交通省は、どちらになるのかについての基準となる

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(いわゆるガイドライン)

制定し、国土交通省のHPで公開しています。

 

これの別表を見ていくと、

1.床については

(1)家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡について

  家具保有数が多いという我が国の実情に鑑み、その設置は、

  必然的なものであり、設置したことだけによるへこみ、跡は、

  通常の使用による損耗と考えられる。

   カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビについて

  飲み物等をこぼすこと自体は通常の生活の範囲と考えられるが、

  その後の手入れ不足等で生じたシミ・カビの除去は、

  賃借人の負担により実施するのが妥当と考えられる。

(2)畳の変色、フローリングの色落ち日照、建物構造欠陥による

      雨漏りなどで発生したもの)について

   日照は、通常の生活で避けられないものであり、また、

  構造上の欠陥は、賃借人には責任はないと考えられる(賃借人が

  通知義務を怠った場合を除く)。

   冷蔵庫下のサビ跡について

   冷蔵庫に発生したサビが床に付着しても、

  拭き掃除で除去できる程度であれば、

  通常の生活の範囲と考えられるが、そのサビを放置し、

  床に汚損等の損害を与えることは、賃借人の善管注意義務違反に

  該当する場合が多いと考えられる。

   ただし、賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるものは、

  賃借人の善管注意義務違反に該当する場合が多いと考えられる。

(3)引越作業で生じたひっかきキズについて

   賃借人の善管注意義務違反または過失に該当する場合が多いと

  考えられる。

   落書き等の故意による毀損については当然賃借人の負担で行う。

2.壁・天井については

(1)テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電機ヤケ)について

   テレビ、冷蔵庫は、通常一般的な生活をしていく上で必需品であり、

  その使用によるヤケは通常の使用ととらえるのが妥当と考えられる。

(2)台所の油汚れについて

   使用後の手入れが悪くススや油が付着している場合は、

  通常の使用による損耗を超えるものと判断されることが多いと考えられる。

(3)結露を放置したことにより拡大したカビ、シミについて

   結露は、建物の構造上の問題であることが多いが、

  賃借人が結露が発生しているにもかかわらず、賃貸人に通知もせず、

  かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合には、

  通常の使用による損耗を超えると判断される場合が多いと考えられる。

(4)壁に貼ったポスターや絵画の跡について

   壁にポスター等を貼ることによって生じるクロス等の変色は、

  主に日照などの自然現象によるもので、通常の生活による損耗の

  範囲であると考えられる。

(5)タバコ等のヤニ・臭いについて

   喫煙等によりクロス等がヤニで変色したり、臭いが付着している場合は、

  通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多いと考えられる。

   なお、賃貸物件での喫煙等が禁じられている場合は、用法違反にあたるものと

  考えられる。

(6)エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡について

   エアコンについても、テレビ等と同様、一般的な生活をしていく上で、

  必需品になってきており、その設置によって生じたビス穴等は通常の損耗

  と考えられる。

(6)壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボード

  の張替が必要な程度のもの)

   重量物の掲示等のためのくぎ、ネジ穴は、画鋲等のものに比べて深く、

  範囲も広いため、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多いと

  考えられる。

   なお、地震等に対する家具転倒防止の措置については、予め、賃貸人の承諾、

  または、くぎやネジを使用しない方法等の検討が考えられる。

(7)クーラー(賃貸人所有)から水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食した

  場合について

   クーラー保守は、所有者(賃貸人)が実施するべきものであるが、

  水漏れを放置したり、その後の手入れを怠った場合は、通常の使用による損耗

  を超えると判断されることが多いと考えられる。

(8)クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)について

   畳等の変色と同様、日照は通常の生活で避けられないものであると

  考えられる。

(9)壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)

  について

   ポスターやカレンダー等の掲示は、通常の生活において行われる範疇の

  ものであり、そのために使用した画鋲、ピン等の穴は、通常の損耗と考えられる。

(10)クーラー(賃借人所有)から水漏れし、放置したため壁が腐食した

  場合について

   クーラーの保守は、所有者(この場合賃借人)が実施すべきであり、

  それを怠った場合には、善管注意義務違反と判断されることが多いと

  考えられる。

(11)天井に直接つけた照明器具の跡について

   あらかじめ設置された署名器具用コンセントを使用しなかった場合には、

  通常の使用による損耗を超えると判断されることが多いと考えられる。

(12)落書き等の故意による毀損について

   通常の使用の結果による損耗とは言えない。

3.建具(襖、柱など)については

(1)網戸の張替え(破損等はしていないが次の入居者確保のために

  行うもの)について

   入居者入れ替わりによる物件の維持管理上の問題であり、

  賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。

(2)地震で破損したガラスについて

   自然災害による損傷であり、賃借人には責任はないと考えられる。

(3)網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)について

   ガラスの加工処理の問題で亀裂が自然に発生した場合は、賃借人には

  責任がないと考えられる。

(4)飼育ペットによる柱等のキズ・臭いについて

   特に、共同住宅におけるペット飼育は、未だ一般的ではなく、

  ペットの躾や尿の後始末などの問題でもあることから、ペットにより

  柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合は、

  賃借人負担と判断される場合が多いと考えられる。

   なお、賃貸物件でのペットの飼育が禁じられている場合は、

  用法違反にあたるものと考えられる。

(5)落書き等の故意による損耗について

   通常の使用による結果とは言えない。

4.設備、その他(鍵など)については

(1)全体のハウスクリーニング(専門業者による)について

   賃借人が通常の清掃(具体的には、ゴミの撤去、掃き掃除、

  拭き掃除、水回り、換気扇、レンジ回りの油汚れの除去等)を

  実施している場合は、次の入居者確保のためのものであり、

  賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。

(2)エアコンの内部洗浄について

   喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において

  必ず行うとまでは言い切れず、賃借人の管理の範囲を超えているので、

  賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。

(3)消毒(台所、トイレ)について
   消毒は、日常の清掃と異なり、賃借人の管理の範囲を超えているので、

  賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。

(4)浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保の

  ため行うもの)について

   物件の維持管理上の問題であり、賃貸人負担とするのが妥当と考えられる。

(5)鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)について

   入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とする

  ことが妥当と考えられる。

(6)設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)について

   経年劣化による自然損耗であり、賃借人に責任はないと考えられる。

(7)ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すすについて

   使用期間中に、その清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合は、

  賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断される場合が多いと考えられる。

(8)風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等について

   使用期間中に、その清掃・手入れを怠った結果、汚損が生じた場合は、

  賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断されることが多いと考えられる。

(9)日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損について

   賃借人の善管注意義務違反に該当すると判断されることが多いと考えられる。

(10)鍵の紛失、破損による取替えについて

   鍵の紛失や不適切な使用による破損は、賃借人負担と判断される場合が多い

  ものと考えられる。

(11)戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草について

   草取りが適切に行われていない場合は、賃借人の善管注意義務違反に該当すると

  判断される場合が多いと考えられる。

 

と、国土交通省ガイドラインでは、こんな風に列挙されています。

土地を分割する場合も正常価格にならない

先の記事では、

「隣の土地は倍額を払ってでも買え」と言われることがあるように、

土地の所有者が隣接地を購入する場合には、

全くの第三者がその土地を購入する場合よりも価格が高くなり

これを限定価格と言うという話をしました。

 

実は、このような土地の併合の場合だけでなく、

土地の分割の場合も限定価格になるんです。

 

不動産鑑定評価基準では、

限定価格とは、市場性を有する不動産について、

不動産と取得する他の不動産との併合又は

不動産の一部を取得する際の分割等に基づき

正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値

と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における

取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。」

とされていますが、

この下線部の「不動産の一部を取得する際の分割」の場合になります。

 

不動産鑑定評価基準における例示では、

経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合」

を提示しています。

 

たとえば、ある土地の一部を分割して取得しようとする場合には、

分割後に残る土地(残地)の利用効率が低下して

価値が下がることがあります。

 

よくあるのが道路拡張のための用地買収です。

道路拡張のためには、その道路に接している土地の一部を

道路拡張者である自治体が買う必要があります。

このとき、

買収する土地の一部は、

道路を拡張するという目的のためだけに買収するので、

形状とかは、細長く、通常、その部分だけでは、

建物などを建てるには面積が小さい土地のことが多いです。

すなわち、買収する部分だけで見ると、使い勝手の悪い、

細長い小さな土地ということになるので、

ちゃんとした建物を建てられる形状と面積を持った土地に比べると

安く査定されても仕方がないはずのものです。

 

しかし、通常は、

買収する部分の形が悪くて、面積も狭いから

安い価格で売ってよねというようにはなりません。

1㎡当たりの単価(1坪当たりの単価)からすると、

ちゃんとした形状と面積の土地と同等の価格で買収しています。

 

これは要するに、

土地の一部を買収された後の残地

買収された部分だけ面積が小さくなりますし、

奥行の長さも短くなってしまい、

1㎡当たり(1坪当たり)の単価が減価してしまうので、

その減価分も考慮して買収するようになっているからです。

 

ある土地の一部を分割して取得しようとする場合

残地の利用効率が低下して減価が生じてしまうことになるときには、

土地を分割される所有者は、残地の減価分の補償を受けないと、

その土地を分割して売ろうとはしません。

 

そのため、

このような場合に、土地を分割して取得しようとする者は、

残地の減価分の補償を上乗せした価格を払って

買わざるを得ないことになります。

 

この場合、

分割された土地の価格は、市場価値を乖離して、

残地の減価分を補填できる者に市場が限定されることとなり、

この減価分の補填相当を上乗せした価格

経済合理性に反する不動産の分割を前提とした売買における価格です。

 

なので、土地を併合する場合だけでなく、

土地を分割する場合にも限定価格になる場合があるということになります。

正常価格だけが適正な価格ではない(土地の併合の場合「隣の土地は倍額を払ってでも買え?!」)

土地の価値を適正に評価した価格を正常価格と言います。

しかし、土地の価格は正常価格だけではありません。

正常価格ではない適正な価格もあるのです。

そのことを知らないと、

適正な価格で売れたと喜んでいたが、

実は損をしていたということになりかねません。

 

そういった正常価格ではない価格に限定価格というのがあります。

この限定価格というのは、

買主によっては、正常価格ではない、もっと高い価格が適正な価格になるというものです。

 

どういうものかと言うと、

土地を持っている人が、

自分の土地に接している隣の土地を買うような場合です。

 

たとえば、

公道に面していない無道路地は、

建築基準法によって建物を建てることができないので、

そんな土地を買う人はいません。

他人の私有地を通らなければ、その土地に行くことができないので、

資材置き場として使うのにも不便です。

したがって、このような無道路地は、基本的には売れないか、

売れるとしても、タダ同然の価格じゃないと売れません。

 

ところが、このような無道路地でも、

お金を出して買う価値がある人がいます。

そうです。

公道に面した土地の所有者で、

無道路地がその所有者の土地に隣接している場合です。

 

公道に面している土地を所有している人は、

その土地に隣接している無道路地を買えば、

土地が広くなって元々の土地が使いやすくなり、

また、場合によっては、

形の悪かった元々の土地の形を

整形な土地にすることができることもあります。

 

このような場合に、

隣接する無道路地を買うと、

元々の自分が所有していた公道に面している土地の価値が上がり、

無道路地の価値も上がります。

この両方の価値が上がる部分(増分価値)を金銭的に評価した金額で買えば、

この人は、無道路地をお金出して買っても全然損をしないわけです。

 

無道路地の例が典型例がですが、

無道路地でなくても、

自分が所有している土地の隣の土地を買うということは、

土地が使いやすくなって、相応の増分価値が発生するので、

俗に

「隣の土地は倍額を払ってでも買え」

などと言われるわけです。

 

この

隣の土地を買う場合には、正常価格よりも更に高い価格になるよ

ということは、

不動産鑑定評価基準にも、ちゃんと定められています。

 

ちょっと難しい表現になりますが、引用しますね。

まず、正常価格よりも高くなる場合の価格があるとして、

限定価格の定義をしています。

 

曰く、

限定価格とは、市場性を有する不動産について、

不動産と取得する他の不動産との併合又は

不動産の一部を取得する際の分割等に基づき

正常価格と同一の市場概念の下において

形成されるであろう市場価値と乖離することにより、

市場が相対的に限定される場合における

取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を

適正に表示する価格をいう。」としています。

 

上の下線を引いた「不動産と取得する他の不動産の併合」

が隣の土地を買う場合ですね。

不動産鑑定評価基準では、具体例として、

「隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合」

と明記してます。

 

たとえば、

200㎡のA土地の価格が1500万円

50㎡のB土地の価格が200万円の場合に、

2つの土地を一体化すると土地が使いやすくなって

2000万円の価値の土地になる場合、

300万円(=2000万円ー(1500万円+200万円))

増分価値が発生します。

したがって、A土地の所有者は、

B土地を500万円(=200万円+300万円)で買っても損しません。

逆に、B土地の所有者は、

A土地の所有者にB土地を正常価格である200万円で売ってしまうと、

500万円で売れたのに、300万円を損したことになってしまいます。

 

もちろん、増分価値を全部乗っけて売買するのか、

ある程度負けるのか(増分価値の2分の1だけ乗っけるとか)は、

売買の交渉の中で自由に決められます。

 

要するに、

隣の土地の所有者が土地を売ってくれと言ってきたときには、

この限定価格という概念を忘れてはならないといういうことです。